俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 初めて折れたプライド。
 
 こはるが女遊びが派手な男や人を大切に出来ない人間を嫌っていることはなんとなくわかる気がした。彼女の父親はそのあたりが適当で、母親のいつきも相当困らされたようだったから。

 着用していたスーツのポケットから煙草を取り出し口に咥える。ライターで火をつけ、煙を目一杯吸うと少しだけ心が満たされたような気がした。

 今まで誰かを欲しいと思ったことがなかったから、こんな気持ちは初めてだった。

 こはるの目に自分が映る事がこんなにも心を沸き立たせるものなのかと。
 彼女の視線を自分だけに向けさせたい、独占したいと言う気持ち。溢れて止まらなかった。


 ーー多分、初恋だったのかもしれない。


 そう自覚した途端、俺は俺の初恋が終わってしまったのだと気がつく。
 俺はこの日、どうやら失恋したみたいだった。
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