俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 幼い頃から何処へ行っても私は『花宮いつきの娘』として見られ続けていた。当たり前だ。母は日本国民なら誰もがその名を一度は聞いたことがあると言われるほどの大女優なのだから。

 そのしがらみは何処へ行ってもついて回った。長きにわたって世間の目に晒され続けていた私は一時期家を出るのも億劫になることがあった。けれど、そんな私を救ってくれたのもまた花宮いつきなのだ。
 
 心を閉ざした私がもう一度立ち上がろうと思ったのは演技に出会ったからだった。テレビに映る花宮いつきの怪演に心打たれ、女優を志すことになったのだ。

「……私があの人の娘として世間に晒されることを嫌っていると知ってて提案しているんですか?」

「当たり前だ」

 玲二は人を食ったようなふてぶてしい様子で答える。横柄な仕草が癪に触る。
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