俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
このときのヒロインーー加奈子は一体どんな気持ちだったのだろうか、何度も考えた。
歓喜に打ち震えたのか、それとも驚きで頭が真っ白になったのか。
私はーーそのどちらともだと思った。
だから私はそのまま男の唇の温もりに寄り添うようにして瞼を閉じる。
優しいキスに酔いしれる二人の唇が離れたあと、男が『俺も』と告げる。そして二人は額を合わせて微笑み合いーーこの場面でカメラが引いていき、カットがかかるはずだった。けれどーー。
「……んんっ」
優しいキスなどではなく、強く求められるようなキスで。
こんなのは台本にもなかったはずなのに。
ここにいるのはヒロインの加奈子ではなく、私自身に戻ってしまっている。
玲二とは異なる男の唇の温もりに演技を忘れて動揺するほかなかった。