初恋は海に還らない
──耳鳴りがした。自分で聞いておいて、聞きたくないと心が拒否する。
「……プロポーズして三日後に、アイツは父親の釣りに付き合って、俺が渡した結婚指輪をあそこから落としたって。俺は何度も新しい物をやるからって言ったのに。危ないからあんな所降りたらダメだって、止めたのに──俺に黙って指輪を探しに行って、落ちたんだ」
「……洸」
「俺が死なせた、俺がプロポーズしなきゃ、指輪をやらなきゃ、アイツは生きてた。アイツが居ない日々なんて、生きてるだけ無駄だって思った。けど、俺の店の予約はずっと埋まってる。せめて、アイツが頑張れって言ってくれてた店だけは、予約を終えるまでは生きてようと思ってこれまでやってきた」
「…………」
「──それであの日、やっと予約分を掘り終えた。やっとアイツのところに行けると思ったんだ」
洸は窓の外を見る、開いた窓から雨が吹き込み、ソファーや床を濡らしていた。けれど洸は、その光景を見ても微動だにしなかった。
私は足の裏が床に張り付いたかのように、その場から動けない。
「なのに、都が居た」