伯爵令嬢は無口な婚約者から愛の証を貰いたい
「グレン様、お庭に花が咲きました」
「・・・そうか」
「蝶が飛んでいます。トンボもいました。」
「・・・そうか」

 今も続く顔合わせの時は、常にメイティーラが話題を提供し、彼がそれに相槌をうつ、という具合であった。

 メイティーラは、銀色の流れるような髪に、グリーンと珍しい瞳の色をしている。その儚げな様子と、艶やかな肌。稀にみる見目麗しい彼女は、「緑碧玉の美女」と呼ばれていた。

婚約が発表された時は、まだ15歳だったので、その美しさはまだ蕾といったところであった。それが、この2年で花が咲くようにメイティーラは、美しく成長した。最近でも、婚約を知らない貴族から釣書が届くほどである。

女性にしては、背の高い方であったが、グレンと並ぶとバランスがいいので、あまり気にならなかった。

「やっぱりグレン様は、私のことをお嫌いなのかしら」

 ここ最近は特に、二人で会う時は難しい顔をすることが多い。

「君は、その・・・いや、何でもない」
「グレン様?何か、おっしゃいましたか?」
「・・・いや、いい」

 そう言って、会話が終わることもしばしばであった。メイティーラは、それでも彼が優しいことや、細い眼で見つめられると嬉しいこともあり、グレンが好きだった。自分の派手な外見とは反対に、静かで内向きな性格には、無口でもグレンの性格は心地良かった。

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