社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「プレートはどれを選ぶつもりなん?」

 くるみと一緒にメニューを覗き込みながら聞いたら、「どれも美味しそうで迷うちょるんですけど……」とつぶやいたくるみが、「うち、甘酢が好きなんで、海老と揚げ茄子のにしてみます!」と、まるで清水の舞台から飛び降りるみたいな神妙な面持ちで、真ん中の写真を指さす。

ほいじゃあ(それじゃあ)俺は湯引きポン酢にしようかのー」

 何気なく言った実篤の言葉に、くるみが名残惜(なごりお)しそうに生姜焼きの写真を撫でたのが目に入って。

 それに気付いた実篤は思わず続けていた。

「――それと、腹減ったけん、単品で生姜焼きも頼もうかな。一人で食うには多過ぎるけぇ、くるみちゃんも加勢してくれるじゃろ?」

 恐らく今の自分達みたいに候補を絞りきれない客への配慮だろう。

 単品メニューでライス抜きのおかずのみが頼めるようになっていた。

***

「あー、もう苦しぃーっ! お腹いっぱいではち切れそうです!」

 言葉とは裏腹。
 とても嬉しそうにニコニコ笑うくるみに、実篤(さねあつ)も自然と笑みがこぼれる。

「ホンマじゃね」

 これはもう、腹ごなしに少し歩き回るしかないね、と二人で顔を見合わせて。

 実は実篤的には結構計画的にくるみを紅茶専門店『愛しい香り(モナローム・シェリ)』から徒歩十五分くらいの場所へ誘導することに成功した。
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