社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「ね、くるみちゃん、結構歩いて腹もこなれて来たし、あそこのお店に入ってみん?」

 実篤が指さした先。

 『Tazakiジュエリー』と書かれた、紺色と金を基調としたシックなジュエリーショップがあって。
 クリスマス商戦を終えたそのお店は、だけど今度は「新春初売り」と銘打って、店内をすっかりお正月仕様に切り替えていた。

 店舗外、入り口のところ両サイドに門松が立てられているのも何だか新鮮で。

 この辺り、矢張り商売人と言うのはすごいな、と感心した実篤だ。

 自分も経営者としてこういうのは見習わねば、としみじみ思う。

「こう言う風にお店が独立したジュエリーショップとか……うち、初めて入ります」

 実篤(さねあつ)に腰を支えられて、くるみがソワソワした様子で自動ドアの前に立った。

 恐らくくるみはショッピングモールなどにテナントとして入ったお店にふらりと立ち寄ったことはあるけれど、こんな風に一つの店舗として展開しているような貴金属店には入ったことがないのだろう。

 ドアが開くと同時、「いらっしゃいませ」と、こちらへ視線を投げてきた店員らから一斉に声を掛けられて、くるみが緊張のためか小さく身体を跳ねさせたのが分かった。

「俺がついちょるけん、そんとに(かと)ぉならんでも大丈夫よ」

 クスッと笑ったら「こ、怖がっちょるわけじゃないですっ」と、くるみがぷぅっと頬を膨らませる。

 それが何とも可愛くて堪らないと思ってしまった実篤だ。

「そうなん? それ(ほい)じゃぁ失礼なことを言うてしもうたお詫びに何かプレゼントさして?」

「えっ」

 最初からそのつもりでここにくるみを連れてきた実篤だったけれど、何か理由がないとサラリとプレゼントさせてくれそうにないなとも思っていて。

 取ってつけたようにそんなことを言ったら、やっぱり不自然だと思われたらしい。
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