社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「ごめん! けど……俺、見とるつもりはないんよ? その……珍しいもんが多いけぇ勝手に目に入ってくるだけで」

 慌てる実篤(さねあつ)に、くるみがプゥ〜ッと頬を膨らませてから、

それ(ほい)じゃあ、目ぇつぶっちょってください。うちが誘導しますけぇ」

 言うなり、いきなりくるみに手を握られてしまったから堪らない。
 当然のように実篤の心臓はドキン!と大きく跳ね上がった。

(ちょっ、くるみちゃん、マジでやめてーっ! 心臓が持たん!)

 恥ずかしいくらい顔がブワリと熱くなったのを感じながらくるみを見つめたら、彼女も耳まで真っ赤にしていて。
 どうやらここを第三者に見られてしまうことは、くるみにとって実篤の手を握る以上に恥ずかしいことらしい。


(台所事情に負ける俺って……)

 もういっそ開き直って、自分の手を引くくるみの小さな手を思うさまギュッと握り返してやろうかと思ってしまった実篤だ。

(もぉ、どうなっても知らん!)

 そっと指を絡めるようにくるみの手を握り返したら、彼女がピクッと反応して。

 途端、実篤は自分がやったことがやたらと恥ずかしくなってしまった。
 でも一度絡めてしまった指を、今更外すのは意識しているっぽくて余計に出来ないではないか。

「あ、あのっ。実篤さん。実篤さんは……ひょっとしてうちのこと……」

 こちらを見ないままにくるみが何かを言い掛けて、「あ、やっぱりいい(ええ)です、忘れてくださいっ」とか。

めちゃくちゃ(ぶちくそ)気になるんじゃけど、くるみちゃん!)

 手がしっとりしてきてしまったのは、実篤が汗をかいたからか、はたまたくるみがそうなったのか。

 ふたりして無言で手を繋いだまま、変な沈黙に包まれる。
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