社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
(ひょっとしてくるみちゃんが期待しちょったほど俺の格好が似合(にお)うちょらんかったとか……?)

 それでガッカリさせてしまったんだろうか?

 いつものくるみなら黄色い声をあげて「きゃー! 実篤(さねあつ)さんっ!」となりそうだよな?と思ったら、段々不安になってくる。


「ほらっ! 遅くなっちゃいましたし、急ぎますよ?」

 ソワソワする実篤をよそに、くるみが実篤の手をギュッと握って顔を見上げてきて。

 不覚にもその可愛さにドキッとしてしまう。

 くるみに「ほらほら」と()かされながら、(急がんといけんって……。何か時間に制限でもあるんじゃろうか?)と考えて、自分は何一つ今日の計画について知らされていないことに思い至った実篤だ。
 
「あ、あのっ、くるみちゃん、今日って――」

 ――なんをする予定なん?と続けようとしたけれど、「話は後です。車、行きますよ?」と素っ気なくさえぎられてしまった。
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