君が夢から醒めるまで
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匠真、ごめんなさい。
親の勝手な都合で離婚して、あなたの大好きだった場所を離れることになってしまったこと、本当にごめんなさい。でもね、お父さんもお母さんも嫌いになったから離れる訳じゃいないの。それだけは分かってほしい。親として、あなたを守りたかった。そうやって二人で選んだ選択だったの。それが結果的にあなたを傷つけてしまったかもしれない。それでもお父さんもお母さんも、あなたを大切に想っていることだけは、それだけは分かってね。
仕事ばっかりだったお父さんはあまり家にいなくて、お母さんも一人であなたを育てるのがしんどくて、何度もあなたに強く当たってしまったと思う。それでもあなたは一度だって文句一つ言わずに一緒にいてくれましたね。
寂しい思い、辛い思い、たくさんさせて本当にごめんね。
お母さんは匠真がいてくれて本当に幸せです。
匠真がいるからどんなことがあっても生きていこうと思えます。
匠真の存在がお母さんの全てです。
私の人生の中で唯一誇れることは、十五年前あなたを産んだこと。初めて抱き上げた時のことを今でもよく覚えています。小さくて小さくて、今にも消えてなくなりそうなのに、私にとって何よりも大きくて特別な存在のあなたを一生かけて守っていこうって、そう思ったの。
でも、もっと優しくしてあげればよかった。もっと一緒に遊んであげればよかった。もっともっとって、今とても思っています。
だけど、どんなに後悔しても過去は変えられない。だからね、今この瞬間からお母さんはまた匠真と一緒に生きていきます。
だって、匠真はこんな頼りないお母さんを選んでくれたから。今までずっと「お母さん」って私の後ろをついてきてくれたから。そんな匠真と一緒にお母さんは生きていきたいです。
そしていつか家族みんなで写真を撮って、一緒にこのアルバムを完成させようね。
匠真、お母さんは今までもこれからもずっとあなたを愛しています。
十五歳の誕生日、おめでとう。
生まれてきてくれて、本当にありがとう。
三月三十一日 母より
全てを読み終えてから走馬灯のように蘇る家族との思い出。俺は、いつだって不幸ではなかった。本当はいつだって幸せだったんだ。大好きな二人と一緒にいられるだけで、それだけで幸せだった。
「ばあちゃん、俺……」
「ばあちゃんにじゃない、お母さんに届けてあげなさい」
ばあちゃんはそう言って優しく頷いてくれた。その優しさに俺の震えた口元が動き出す。ゆっくり、丁寧に、動き出した。
「——母さん、母さん、ごめん。何も気づいてあげられなくて、ごめん。守ってあげられなくてごめん。俺、大好きだったよ、母さんと父さんが大好きだった。俺を、産んでくれて、育ててくれて、たくさん愛してくれて、ありがとう」
泣きじゃくる俺をそっと包み込むようにばあちゃんは抱きしめてくれた。「大丈夫だよ」と何度も繰り返して背中をさすってくれた。その温かさに俺の涙は余計と溢れ出た。