至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-
異様に広いのに誰もいない。
異様なくらい静かで、なんの音も響かない。
だんだん現実味がなくなっていく。
知らない世界にひとり放り出されたみたい。
実はここは龍泉閣じゃないのかもしれない。
この廊下には終わりがないかもしれない。
わたしは永遠にひとりで彷徨わなきゃいけないのかもしれない──……。
なにを馬鹿げたことを……。
そう思いながらも、背中が冷えて、手にはヘンな汗が滲んで。
「──おいお前」
「っ、!?」
少し先の廊下からぬっと現れた人影に、本気で心臓が止まるかと思った。
「っ、は、え」
ドッ、ドッ、ドッ……。
鼓動が早鐘を打つ。
近づいてくる。
「誰だ。こんなところで何してる」
ようやく輪郭を捉えられる位置まできたその人は、わたしを見て強く言い放った。