一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
翌朝、ちゃんと起きられたがやはり体調は今ひとつ。
とてもだるいし、気持ちの悪さが続いている。
微熱があるので胃腸炎かもしれない。
私は市販の薬を飲み、ゼリー飲料を口にすると家を出た。

「紗夜ちゃん、大丈夫なの？」

出勤すると珍しく真子ちゃんがもういた。

「ごめんね。昨日休んじゃって。なんとか今日は大丈夫そうだから出てきたの」

「本当？なんだか顔色悪いよ。もう一日休んだら？」

「ありがとう。でもそういうわけにもいかないし大丈夫だと思う」

心配そうな真子ちゃんに空元気で答えたが顔色の悪さは隠せていなかった。

「なら無理しないようにね。ダメなら早くいってね」

私は頷くとデスクに荷物を置き、ルーティンワークを始めた。
仕事をし始めると気がまぎれるのか、気持ちの悪さは多少治った。
お昼になるまで無心に働けた。
ファービスのみんなは今年に入り納期がだいぶ迫ってきたので忙しさが佳境に入っていた。無心にパソコンを打つ姿に圧倒される。
私にできることはみんなを集中して働かせてあげることだけ。
書類の整理やコーヒーを入れてあげることくらいしかしてあげられない自分の無力さが情けない。
でもここで何かみんなの役に立ちたくて働いていた。
もっと一緒に働いていたいな。
みんなの働く姿を見てそう思った。

みんなはお昼に出られなさそうなので買い出しに行く事を申し出ると、助かると言われたくさんお願いされた。
私はお財布を持ち立ち上がると松下さんが、俺もいくと言って後を追いかけてきた。

「紗夜、体調はどうだ？」

「ご心配おかけしてすみません。大丈夫です」

昨日の今日でなんだか恥ずかしい。
どんな顔をしたらいいのか分からなかった。

「なら良かった」
そういうと頭をポンとされた。
そんなことされるだけで私の胸はギュっと締め付けられる。

コンビニで買った大量の食事も松下さんが持ってくれ、私には小さな袋だけ渡してくれる。
彼の優しさに触れるたび私はどんどん彼に惹かれてしまう。

もうこれ以上近くにいたら私がダメになる。
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