一夜限りのはずだったのに実は愛されてました

「それじゃ、帰るけど大丈夫か？何かあったら電話してこい。何時でもいいから。1人で泣くなよ。必ず俺に言え。すぐ駆けつけてくるからな。それから明日は無理なら休んでもいい。鍵はちゃんとかけるんだぞ。それから暖かくしてから寝るんだ。それと……」

松下さんは帰り際、これでもかというくらいに私の事を心配してくれて声をかけてくれた。
いくつも言われ、こんなに心配されてると彼の優しさが私の傷ついた心を埋めてくれた。

「大好き」と何度もいいそうになった。
彼に抱きしめて欲しいと強く思った。
あの夜の事を思い出すだけで今でも幸せな気持ちになる。
あの思い出だけで生きていくつもりだったのに、それだけでは満たされないことに気がついてしまった。

松下さんは私の頭をポンとすると帰って行ってしまった。
急に部屋の中の明かりが消えたように寂しくなった。
松下さんに縋りつきたくなるのを必死で堪え、私はベッドに戻った。
布団に包まり、身体をぎゅっと抱きしめ歯を食いしばった。
もう泣きたくない。

せっかく温まった心がまた冷えていかないように頭の中から大吾さんを追いやった。松下さんでいっぱいにしたかった。