一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
拓巳さんは事あるごとに私に話しかけ、大丈夫かと聞いてくるようになった。
事務の私より拓巳さんは忙しいのに合間を縫って話しかけてくるため、大丈夫だからいつも通りにしてくださいとお願いした。
わかった、と言いつつも今度は私は目で追っているのがわかる。
拓巳さん、どうしちゃったのかしら。

朝はもちろん拓巳さんの車で出勤。帰りはどうしても私の方が早いため別々になるが、必ず声をかけてくれ、体調が悪ければタクシーを使うように言われる。
家までタクシーだなんて驚いてしまう。そんな事出来るわけがない。
私は、大丈夫ですから、が口癖のようになり拓巳さんに繰り返す。
そうは言ってもつわりは辛く、時々電車を降りてはベンチで休むこともあるが拓巳さんに甘やかされ私の胸は温かいもので満たされていくのがわかった。
でも、本当にこれでよかったのかとふとした時に頭をよぎる。
拓巳さんと一夜の関係を持ったのは私が望んだから。その代償を背負わせてよかったのだろうか。
大好きな拓巳さんと一夜の関係をもてたことも妊娠したことも私はとても幸せだった。けれど拓巳さんにとってはどうだったんだろう。
社員の女の子を妊娠させてしまったので責任をとってくれたけど、彼は今どう思ってるのだろう。
彼にとっては望まない妊娠だったはず。
そう思うと私の負の連鎖が止まらない。
拓巳さんに子供だけでも好きになってほしい。
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