一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
拓巳さんが私の部屋に来て1ヶ月。
相変わらず時々なる実家からの電話には出れずにいた。
休日出勤で拓巳さんはおらず、私は意を決して電話に出ることにした。

「やっと出たか!バカモンが!」

第一声にいつもの、バカモンが!という怒鳴り声で私は一気に萎縮してしまった。

「お前はどうして自分の口から俺に言わないんだ。お見合いに妊娠している娘を連れて行ってたなんて、おかげでうちは恥さらしだ」

「ごめんなさい」

「お前を東京に出したのは失敗だった。こんな好き勝手なことをする子供に育てた覚えはない」

「ごめんなさい。でもお父さん。私は幸せになったらダメなの?お父さんの思う通りに動かないとダメ?私にも夢や希望があるの。やりたい事もある。好きな人と結婚もしたいし、その人の子供も欲しい。でもそれは家業を守ることを優先しなければならないの?」

私の言葉に父の返事は返ってこない。
しばらくすると電話が切れてしまった。
きっと怒って、呆れて切ってしまったのだろう。

私はソファに座り込み、そのまま目を閉じてしまった。
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