一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
翌日きたマンションは拓巳さんのマンションから公園を挟んだ反対側にあった。
エントランスからとても贅沢な作りで本来なら私が足を踏み入れられない物件だ。
拓巳さんのマンションもすごく素敵だけどこちらは家族向けなのか部屋数も多く、キッチンも広い。全ての憧れが詰まったような部屋に私の胸はときめくが、反対にこんな私がここに住んでいいのかと不安になった。
一晩だけの関係で子供ができて責任をとってくれる拓巳さんはとても優しい人だ。
でもそんな拓巳さんを一生縛っていいのか、この素敵なマンションで家族ごっこをしていくのかと思うと胸が締め付けられた。
私を好きになってほしい、ただそれだけが1番難しいってことに気が付きたくなかったけど気が付かざるを得なかった。
このマンションの中で好きあっていない2人が暮らしていけるとは思えない。
子供だけで繋がった私たちが夫婦になれるとは思えなかった。
現実的に考えて、引き返すなら今だと思った。
もちろん子供は堕ろすつもりはない。
私が一人、大好きな拓巳さんの子供を育てていこう。
私とこの子が拓巳さんの足枷になりたくない。
拓巳さんの未来を縛りたくない。
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