一夜限りのはずだったのに実は愛されてました

家に帰る途中、玲子にメッセージを送り自宅に帰ることを連絡した。
するとすぐに玲子から返信が来た。

【やっぱりね。犬も食わない喧嘩だと思ったわ。責任だけですぐに結婚を決める人はいないし、紗夜が好きなんだと思ってたよ。幸せになりなよ！でもまたいつでも来ていいんだからね】

そのメッセージを読み、私は玲子の言葉が嬉しかった。

私のマンションへ帰ると拓巳さんはすぐに部屋を温め、温かい飲み物も用意してくれるとソファに座る私にピッタリとくっついて座ってきた。

「紗夜に想いが伝わるなんて幸せすぎるよ。この数日生きた心地がしなかった。手に入れたと思った紗夜がいなくなると思ったら何も手につかなくて、今日も仕事を休むように谷口に言われたんだ」

「まさか、拓巳さんが？信じられません」

「紗夜が出勤したらみんなに言われるさ。俺を捨てないでやってくれって」

そんなことを言う拓巳さんに驚いた。

「俺は紗夜がずっと好きだった。紗夜は知らなかっただろうけどファービスのみんなは知ってたよ。紗夜が鈍くてどうしようかと思っていたらお見合いの話がでたから焦った。みんなからどうするつもりだと散々言われたよ」

「私が気がつかないだけ？」

「あぁ。お見合いなんてさせるなと女性陣にも言われた。好きなら奪ってこい、このヘタレ野郎、と。でも俺がなかなか話せずにいたら紗夜はお見合いしてきてしまった。絶望感に陥ったと思ったら、紗夜は俺の胸で泣いてた。それを見て、もう絶対に俺が紗夜を幸せにするって決めたんだ」

「可奈ちゃんや真子ちゃんがそんなこと言ってたなんて」

「あいつらもっと口汚いことも言ってたけど、正論だから。あの時俺がもっと強引ならお見合いで嫌な思いをさせずに済んだはずだ。俺の気持ちを早く伝えていたら紗夜とすれ違わずに済んだんだ。ごめん、紗夜のことになるといつもの俺じゃなくて臆病になるみたいだ」

そんなこと言う拓巳さんなんて初めて見た。
いつも自信に満ち溢れている人なのに。

「あの夜のことも俺は遊びでは全く無かった。紗夜の初めてをもらう覚悟をして抱いた。紗夜が俺から離れないように、俺に溺れるように大切に抱いたつもりだ」

赤裸々な告白に私はどこを見たらいいのか分からず視線を膝に落とした。

「俺の腕の中にいる紗夜が可愛くて、もどかしかったよ。妊娠したと聞いた時は天にも登る思いとはこのことだと思った。でも自信のなさから責任なんて言葉を使ってしまった。ごめん。何度も俺は間違えてしまった。もう間違えないよ。俺は紗夜が好きだ。愛してる。結婚してください」

そういうとピッタリくっついて座っていたが、私の目の前に回り込み、膝を立て座った。
手には綺麗なガラスの入れ物に入った指輪を持っていた。

「ずっと渡したくて持っていた。紗夜に愛してると伝えられてないのに、子供の父親としか思われてないのに指輪なんて渡せないと隠し続けていたんだ。とんだヘタレ野郎だろ。みんなに言われても仕方ないよ。でも、今日は間違えない。紗夜を大切にします。結婚してください」

私は拓巳さんの言葉に涙が溢れ出た。
拓巳さんの気持ちがたくさん私の中に流れ込んできて胸がいっぱいになった。

「私を拓巳さんの奥さんにしてください」

それだけいうと拓巳さんは私の左手を取り、指輪を薬指にはめてくれた。