一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
2人で改めて産婦人科に行き、予約時間には遅れてしまったが受診することができた。
先程入り口でのことを見られていたのか、周りの人たちからの視線を感じてしまう。

でも拓巳さんは動じることなく、私の手を握りしめ待合室で座っていた。
拓巳さんには似合わないこの場所で、さらには入り口で話し込んだこともあり恥ずかしくないのかと思案するが、あまりに堂々としているのが返っておかしくなりつい吹き出してしまった。

「何笑ってるんだ?」

「いぇ、拓巳さんがあまりに堂々と産婦人科にいるのがおかしくて。しかも私たちさっき入り口で、ちょっとねぇ。だから恥ずかしくないのかなって」
すると小さな声で、
「恥ずかしいに決まってるだろ。公衆の面前で派手に告白するなんて。だからこそ堂々としてるんだ。なんてことないさ、と思ってもらえるように」

そんなことを言う拓巳さんの耳は赤くなっていて、本当は恥ずかしいんだと思うと急に可愛く見えてきた。

「でも私はこうして拓巳さんと病院に来れて嬉しい」

「あぁ、俺もだよ」

そういうとぎゅっと手を握ってきてくれた。

名前が呼ばれ診察室へ案内されるとエコーでこの前よりも大きくなった赤ちゃんの様子が映し出されていた。
拓巳さんも案内され一緒に見ることができると、その様子に目を細めていた。
< 43 / 53 >

この作品をシェア

pagetop