一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
久しぶりにお兄ちゃんからのメッセージが来ていた。

【紗夜、元気か?松下さんのおかげでこっちは事業拡大に向けて大忙しだよ。俺だけでは手が伸ばせなかったから本当にありがたいご縁をもらえたよ。紗夜からもよくお礼を伝えてほしい。幸せになれよ】

拓巳さんのおかげってどういうこと?
そう言われてみるとこの1ヶ月実家からの電話もメッセージもパタリと止んでいる。

一足先に帰ってきた私は拓巳さんが帰ってくるなり問い詰めた。
すると、あの後すぐにお兄ちゃんとコンタクトが取れ電話やメールで事業拡大に向けてのアドバイスをしていたようだった。今のお茶だけではなくお茶を使った商品の開発を始め、最近お茶が海外で注目を浴びいることもあり海外への参入も進めてくれたようだった。それにあたり、松下さんのお兄さんの商社も絡んでくれたようだ。国内シェアだけでなく目線を変えた事業拡大に色々動いてくれたようだった。

「拓巳さん、ありがとうございます」

私は拓巳さんに深々と頭を下げた。

「紗夜、俺たち家族になるんだろ?紗夜の家族は俺の家族だろ?困ったことは言ってこいって言ったよな?でも紗夜のことだから言わないと思って俺がお兄さんと話したまでのことだ。紗夜にはもっと頼って欲しいけどな」

そういうと私の額をコツンとされた。

「俺は紗夜の困りごとは何でも助けてやりたいんだ。だからもっともっと頼って欲しい」

「ありがとう、拓巳さん」

私は拓巳さんに抱きつくと、抱きしめ返してくれた。
私の知らない間にお兄ちゃんとそんないろんなやりとりをしてくれていたなんて。
普段から仕事が忙しいのにお兄さんとも連絡をとってくれ、うちの実家のために動いてくれていたなんて思いもしなかった。私に一言も言わずに負担をかけさせまいとする拓巳さんの優しさが嬉しかった。
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