一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
「なぁ、紗夜。そろそろ籍を入れないか?福岡に行って挨拶しないか?」

拓巳さんは私を抱きしめたまま話してきた。

「紗夜は行きたくないか?」

私は顔を埋めたまま頷いた。

「俺1人で挨拶に行ってきてもいいか?やっぱり筋を通して結婚の許しをもらいたいんだ」

「拓巳さん、いいんです。うちの父には縁を切られたようなものですから」

「そうはいかないよ。紗夜が行きたくなければ俺だけが行ってくるから許してくれないか?」

私は実家の両親とは怖くて会いたくなかった。
日野さんとの結婚を断り、妊娠までしていた私を許すはずがない。
拓巳さんがいくら家業の手助けをしてくれたとしても兄は受け入れても父が許すとは思えなかった。
私の家のことに拓巳さんをまきこみたくなかった。
でも拓巳さんの意志は固く、子供が生まれるまでは待てないし、今すぐにでも私と結婚したいと言ってくれている。
拓巳さんは両親に認めてもらわないまま籍を入れるわけにはいかないから、と1人でも行くと言われてしまった。
私は拓巳さん1人で行かせるわけにはいかなかった。
産婦人科に連絡をすると安定期に入ったので飛行機は長時間でなければ乗っていいと言われこともあり、意を決して福岡へ行くことを決めた。
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