独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 けれど確かに見合いをするのならばあって当然の釣書を、結子は見るどころか有無の確認さえしていなかった。その存在を思い出していれば、事前にこの状況を回避できたかもしれないのに。

 改めて自分が響一のことしか考えていなかったのだな、と思い知る。一途といえば聞こえはいいが、何も確認せずに見合いに挑むなど間抜けにもほどがある。

「まぁ、その前から調べて知ってたけど」
「……なに?」
「ううん、何でも?」

 落ち込む結子の耳にふと聞き捨てならない台詞が届いた。ような気がした。

 顔を上げると目が合うが、奏一にはにこりと笑って誤魔化されてしまう。

「とにかく、どうせ結婚するなら早く一緒に住んだ方が結子の両親も安心するでしょ」
「う、うーん……? でもそれ、籍を入れるときからでいいんじゃないの?」
「うん、だから入籍はすぐにするよ」

 奏一がさらりと言い放った言葉に、結子の思考は今度こそ完全停止した。

 ――聞き間違いだろう。そうに違いない。見合い後すぐに入籍だなんて、急展開にもほどがある。

「挙式は兄さん達が終わってからになるから遅くなっちゃうけど、籍はすぐにでも入れた方がいいと思って」
「……」

 ……聞き間違いじゃなかった。

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