振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「父は、僕に早く結婚をさせたいんだ…会社のためにね。」
「会社のため?」
駿は大きく頷いた。そして深く息を吸う。
「あの人(父親)にとって、僕は会社を守る道具でしかないんだよ。彼女は世界的に有名な、投資家の娘なんだ。まだ僕が小学生の頃にあの人が決めたんだ。」
駿は怒りよりも、悲しい表情に見えた。そして気持ちを堪えているのか、肩が小さく震えている。
「そんな…道具だなんて、駿の考え過ぎではないの?」
「琴音が公園で倒れていた時も、そのことで親父と言い争いになったんだ。確かに会社にとって、この結婚は大きなメリットかも知れない。でも、僕は会社のために結婚をしたくはないんだ。あの人に利用されたくはない。」
いつも穏やかで、冷静な駿が感情を押さえ切れないのか、急に立ち上がった。
そして、私の横に近づくと、横から私を抱きしめた。