振られた私を御曹司が拾ってくれました。

「あの公園で眠っていた琴音を見つけた時、君は涙を流して眠っていたんだ。しかし、その姿はとても美しくて、天使のように見えたんだ。」

「そ…そ…そんな…恥ずかしいことを言わないでください。」


駿に抱きしめられると、心臓が音を立てて大きく跳ねる。
心臓の音を駿に聞かれそうで恥ずかしい。


「その時になぜか思ったんだ。この涙から、守ってあげたいってね。」


駿がそんなことを思ってくれたなんて、驚きだ。
あの時、私が夢に見た王子さまは駿だったのかも知れない。
私はスピチュアルとか、運命とか、信じているわけでは無いが、あの日の夢は、駿との出会いを予言してくれていたのかもと思ってしまう。

駿は私の両肩を掴み、真っすぐに見つめた。
黒く美しく透き通る駿の瞳に私が写っている。


「琴音、僕を信じて欲しい。…今、会社は海外進出に向けて、許嫁である二階堂 祥子(にかいどう しょうこ)との繋がりが欲しいんだ。祥子の父親である、二階堂晴臣(にかいどう はるおみ)は有名な投資家なんだ。その後ろ盾が欲しくて、結婚を急いでいるんだ。」

「駿、それは断れない…ですよね。」

「何とかするつもりだ。もし全てがクリアできたら、改めて琴音に、付き合って欲しいと言うよ…だから、待っていて欲しい。」



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