魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドは幼い頃から刃物を扱う才能の片鱗(へんりん)を見せていた。素早い身のこなし、隙のない動き。狙った位置を確実に突く集中力。【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】の大人達は、彼の将来を期待していた。

 ヴィオルドが十二歳の頃、彼の人生を変えることになる少年と出会う。

 ある日、ヴィオルドは路地裏で彼と同じくらいの歳の少年が数歳年上の少年達に囲まれているのを見かけた。集団いじめだと気づいたヴィオルドは、気まぐれにその少年を助けることにする。

 金髪に緑の瞳を持つその少年はアルベールといい、没落貴族の息子である。貧乏に転落し、アルベールの父親が働かなければならなくなったことを他の貴族は見下しており、その息子達もアルベールに対して嫌な態度を取っていた。何人かでアルベールを囲い、中傷や罵り、暴力などを奮っていた。

「ありがとう、助かったよ。僕はアルベール。君は?」
「俺はヴィオルド。大したことはしてないよ」
「そんなことないよ! 年上相手に何人も倒しちゃうんだもん!」

 純粋に尊敬の眼差しを向けられて、悪い気はしないヴィオルド。二人はその後も約束して路地裏で何度も会うこととなった。そしてヴィオルドは、アルベールとの交流を通して「普通の感覚」を身につけていくことになる。

 貴族が労働することは恥ずべきことだと考えていたが、アルベールは父が働いていることを誇りに思っていた。正当な労働によって対価を得て、そのお金で生活する。そのごく普通のことが、ヴィオルドには目から(うろこ)である。



 人間のあるべき姿を学んだヴィオルドは、今まで【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】がしてきたことを恥じるようになった。同時にこれまでの被害者がどんな気持ちなのかを考えるようになり、絶望や悲哀、憎悪を抱いていることに気がつく。

 自分を導いてくれた両親や他の大人達は間違っていた。そしてそれが正しくないことを知っている。ヴィオルドは信じていたものに裏切られた気分だった。
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