魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 それからヴィオルドは【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】の仕事に消極的になった。相変わらず彼の両親や団員は「功績自慢」に花を咲かせている。ヴィオルドは反吐が出そうな程うんざりしていたが、感情を殺して表情に出さないよう我慢していた。彼はいずれ【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】を潰そうとさえ考え始める。



 アルベールとは善き友となり、アジトを抜け出しては度々会いに行っていた。しかしヴィオルドは【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】のことを告白してはいなかった。仲が深まっていくごとに、重大な秘密を抱えていることに罪悪感を覚えていく。自分のような穢れた人間が、アルベールのような無垢な人間の側にいてよいのか。ヴィオルドはそんな考えを持ち始めた。

 それでも、大切な友に見捨てられるのが怖くて【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】のことが言えないまま、一年が過ぎていた。

「ヴィオはさ、大人になったら何をするの?」
「……特に決めてない。アルは?」
「僕はね、十五になったら父さんが働いてるエルファ商会で働いて、うちの家計の足しにするんだ」
「もう色々考えてるんだな」
「このまま借金が増えていくと爵位を王に返さなきゃいけなくなっちゃうんだ。僕はあまり執着してないけど、一族の誇りだから」

 そこでヴィオルドは気づいてしまった。アルベールには未来の選択権があるのだと。彼の綺麗な手を汚さずに生きていくことができる。

 一方で、ヴィオルドは汚れた手をさらに汚しながら生きていくことになる。彼にとってアルベールは別の世界の人間のように思えた。やはり自分は、彼の人生に影を落としてしまう存在なのだろうか――。



 それからしばらくの間、ヴィオルドはアルベールに会いに行くのをやめた。本来接することのなかった二人の人生を交わらせてしまった気がして、無かったことにしなければならないと思い始める。急に来なくなった彼を、アルベールは心配していた。
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