魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドがいつもの路地裏にぱたりと来なくなったことを心配していたアルベールは、彼が今どうなっているのか知りたくなり訪ねることにした。しかしそこで彼はヴィオルドの家を知らないことに気づく。それでもアルベールは諦めきれなかった。街の人々の目撃情報から、彼の住処を探し始める。



 何日もの聞き込みの結果、ヴィオルドは街外れの小さな小屋の周辺に出没することがわかり、アルベールは早速その小屋に赴いた。

 小屋の前、彼は違和感を覚えた。普通の人なら住みたがらない程古く汚い小屋。中からは騒々しい声が漏れている。本当にこんな、いかにも社会から外れた者の集まりの場所に、ヴィオルドが住んでいるのだろうか。

 勇気を出して恐る恐るドアに手を近づける。そうっと、中の人を刺激しないように、軽くコツコツとノックを鳴らす。

「誰だ? ……アル?」

 扉を開けたのはヴィオルドだった。目の前にアルベールがいることに目を見開いて驚いた。

 出自がバレてしまったことに焦りを抱く。同時に彼も扉の向こう側の光景に驚いていた。そしてヴィオルドが向こう側の人間だということにも。

「どうしたヴィオルド? 知り合いかぁ?」
「お貴族様のボンボンじゃねぇ?」

 【明けぬ夜(ポラル・ノクシア)】の団員達がアルベールに注目し始めた。荒くれ者ばかりの室内に、彼は驚きと恐怖で凍り付いて固まっている。はっと我に返り動き出したかと思ったら、背を向けて走り去ってしまった。ヴィオルドと一度も目を合わせずに。

「あ、アル! 待ってくれ!」

 彼の引き留めも虚しく、アルベールはあっという間に狭い路地に消えてしまった。ヴィオルドは嫌われてしまったのだと絶望する。ずっと自分が犯罪者の仲間であることを隠し続けてきたのだ。見捨てられても仕方が無い。

 ずっしりと重く暗いものが、心にのしかかる。そして心が重くなったからだろうか、彼の身体の動きも遅くなっていく。そのままのろのろと小屋の角に縮こまって座った。

 ――これは、身の程をわきまえなかった俺への罰だ。

 膝を抱えて座りながら自らを戒める。どこも見ていない空虚な瞳が(とび)色の髪の隙間から覗いていた。
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