「そう。神楽は雨乞いの唄を歌うと言った。それは儀式を行うということ。儀式とは雨乞いの儀式。雨乞いの唄を歌い、それでも雨が降らなければ、歌い手を生贄として捧げる」
 彼等に背を向けて、悪玉は神楽の家を出ていった。それに続いて、悪玉の部下たちも出て行った。

「駄目だよ」
 少年は声を挙げた。
「生贄になるなんて、そんなの駄目だ。きっとあいつは、初めから生贄を選ぶつもりでここに来たんだ」

「だけど。私は、この村を救いたいの。この村を救うために、私にできることがあるのなら、やってみたい」
 あのおとなしい神楽にここまでの情熱があったとは思いもしなかった。

「神楽…」
 愛しい娘の名を母は呼ぶ。服の裾で目頭を押さえて。
「昔からあなたはそう。一度言い出したら、誰がなんと言おうと引かないんだから」
 やってみなさい、と言う。
「失敗するとは限らないから。お母さんはあなたを信じているわ」
 言い、部屋の奥にその姿を消した。

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