現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします  レイと綺麗

王子は、
梅酒がツボにはまったようで
飲み干すと、突然質問をした。

「キレイさん。猫好きですか?」

先に桐谷と訂正したかったが・・・
仕方がない、
この場だけだし。

「ええ、好きです。
実家では猫2匹いますし」

綺麗は違う話題になったので、
安堵した。
ペットの話題は無難だ。

王子はスマホの画面を
スクロールしていたが

「これ、見てください」

猫・・
三毛猫の画像だった。

「ジャパニーズボブテイルで、
尻尾がまん丸になっている子で、
すごくかわいいんです」

普通の・・
野良にもいる丸顔で
カワイイ三毛ちゃんのように見えたが、

王子は溺愛しているのだろう。

うちの子カワイイ・・

親バカは猫飼いでも
珍しいことではない。

綺麗もアイコンには、
実家の猫画像を使っている。

「あはっ、カワイイですね。
でもうちの子もかわいいんですね。
これが」

綺麗は
バックからスマホを取り出して、
実家の猫たちの画像を王子に
見せた。

「この茶色のトラは<きなこ>と
いう名前で、
こっちの黒いのは<おはぎ>。

兄弟で保護猫なんです。
レイさんの猫ちゃんは?」

「プレッシャス・・
precious   愛しい人」

綺麗は思わず、のけぞった。

すんげぇー、

猫に、それも普通の猫だけど・・

<愛しい人>なんて名前つけるか?
ペルシャ猫みたいに
モフモフ・ゴージャス系の子ならわかるが・・・

「でも・・
2年前に亡くなりました。
18年間一緒だったのですが」

王子の目は伏せられて、
その声は低かった。 

「両親が離婚をしてから、
いつも僕の傍にいてくれて
愛していました」

綺麗は一瞬、
空気が冷えたのを察知した。

「ネコちゃん・・・
そうだったのですね・・」

<愛していた・・・・>

他に何を言えば良いのか
あまりにも重いではないか?

「おーい、2次会に参加する人、
手を上げてくれ!」

高梨が赤い顔をして
叫んでいる。

女の子たちはキャイキャイ騒いで、
帰り支度をしている。

綺麗は、
氷が溶けて薄くなったサワーを
飲み干した。

仕事が終わった。
でも、肝心の飯は
ほとんど食べられなかったが。

高梨が大声で
「桐谷ぁー・・
レイさんはお帰りだから、
先にタクシーを乗る所まで
一緒に行って。頼むわ」

「ほーい、後で合流するから。
タクシー呼ぶよ」

綺麗はすぐに返事をした。
< 11 / 45 >

この作品をシェア

pagetop