雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 私の反応が薄いから、興味を失くしたようで、後藤さんは話題を変えた。

「そういえば、安住ちゃんって、休みはなにをしてるの?」

 藪から棒にこの人はなにを言うんだろう?
 私にそんなことを聞いてもおもしろくもなんともないのに。

「特になにも。溜まった家事をするとか、読書するとか、勉強するとか」
「勉強?」
「はい。資格試験とかの」
「真面目だなぁ。それ以上、仕事ができるようになってどうするの?」
「趣味なので」

 あきれたように見られるけど、肩をすくめてやり過ごす。

「可愛げがないなぁ。せっかく顔は可愛いのに」
「そんなの目指してませんから」

 そう思うなら放っておいてくれたらいいのに、彼はしつこい。

「そんなこと言ってると行き遅れるよ?」
「別に結婚願望とかありませんし。むしろ、したくないですし」

 私は結婚に憧れはない。というか、結婚に不信感しかない。
 だから、ひとりで生きていく準備をしている。

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