雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「じゃあ、ここから駅の方に行く途中にファミレスあるだろ? そこに土曜の三時集合な」
「うん、わかった」
「ありがとうございます!」

 目をキラキラさせて、吉井さんが微笑む。
 可愛いなぁ。
 ほわっと優しい雰囲気で、きっと食べたら甘いんだろうなと思わせるような女の子。
 やっぱり進藤とお似合い。
 
(私、要る?)

 なにかを話しながら去っていく二人を見て、そう思う。
 楽しげに笑い合う二人に、あの日のお母さんと男の人の後ろ姿が重なる。

(要らないよね? やっぱり進藤にとっても、私は要らない子だった)

 要らないのに、約束だからと要るフリをしてくれなくていいのに。 
 急に虚無感に襲われる。
 
 あとでスマホのメッセージで、進藤に勉強会の断りを入れたんだけど、ヤツは約束だからと言い張って、キャンセルさせてくれなかった。




 
 
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