雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 翌朝、私はとても満ち足りた気分で目を覚ました。
 覚えていないけど、幸せな夢を見ていた。
 ずっと誰かに優しいうれしい言葉をかけてもらっていた気がする。

 夢と同じように温かいものに包まれていると思ったら、進藤に抱きしめられて寝ていた。

「うわっ、進藤!? どうして?」

 飛び起きた私の声に、ヤツは目を擦りながら、起き上がる。

「今日は休みなんだから、もうちょっと寝かせてくれよ……」
「そんな場合じゃないでしょ! どうして付き合ってる人がいるのに、私を連れ込むのよ!」

(そんな不誠実なヤツだとは思わなかったわ!)

 私が睨むと、進藤はがっくりと肩を落とした。

「お前、そこからかよ……」
「そこからって、どこからよ?」
「なんにも覚えてないのか?」
「ん? アイスクリームを食べてて……」
「そこに戻るのかよ! やっぱりなんにも覚えてねーな」

 進藤は額に手を当てた。
 



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