雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 そう言っていると悲しくなってきて、また目が熱くなってきた。そんな私を進藤はギュウッと痛いくらいに抱きしめてくれた。

「俺は夏希が要るよ。だから、それだったら、俺がもらってやる!」
「ほんと? うれしい! でも、なんで?」
「なんでって、夏希が好きだからだ」
「ほんとーに?」
「あぁ、本当だ。好きで好きでたまらない。って、何度目の告白だよ!」

 私はうれしくて、へへへと笑った。
 赤くなって目を逸らした進藤の頬に手を伸ばすと、振り返った彼と目が合って、キスをした。
 なんだか安心して身体の力が抜けていく。

(しんどーが私のこと、すきだって……)

 進藤の胸に顔をうずめて、ふふふと笑い声を漏らす。
 幸せな気分。

「まったく。わかってるのか? 今、プロポーズしたんだぞ? わかってないだろ……。おい、こらっ、寝るな! おい、夏希!」

(ぷろぽーず?)

 進藤がなにか言っていたけど、もうまぶたが重くて重くて、そのまま目を閉じた。



 
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