極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「心配しなくていい」

 そう言って飲み物を取りに行くためなのか、その場を離れようとする衛士の手を今度は私が掴んだ。ほぼ無意識だったので驚いた顔の衛士に対し、とっさに言葉が出てこない。

「あ、あの……飲み物はいいから……少しだけそばにいてほしい」

 正直に今、自分の求めているものを口にする。すると衛士は私の左隣に座り、右肩に腕を回して自分の方へ引き寄せた。

「未亜が望むのなら喜んで」

 衛士の返答に安堵し、私はおとなしく彼に寄りかかる。

「ありがとう」

 伝わる温もりにホッと息を吐いた。

「お礼を言うのはこっちだ。ずっと気を張っていたから疲れただろ」

「ううん。衛士が言った通り、気さくで素敵なご両親だね。茉奈のこともすぐに孫として受け入れてくださって」

「茉奈だけじゃなく、未亜も受け入れているよ」

 即座に訂正され、私は一度言葉を止めた。

「……うん」

 肩に伸ばされていた手は頭に移動し、優しく髪を撫でられる。

 ご両親の気持ちは痛いほどに伝わってきた。だからこそ申し訳なく感じる部分もある。

『あのね、ここだけの話なんだけれど、衛士が未亜さんと結婚するって聞いて親としては胸を撫で下ろしているところもあるの。未亜さんと別れた後の衛士、大荒れしてね。あんな調子でよくアメリカにまた戻ったと思うわ』

 衛士が電話の応対をするため部屋を出ていったタイミングで慶子さんが内緒話をするかのように切り出した。
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