極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 名残惜しく唇が離され、私は衛士にもたれかかる形で抱きついた。肩で息をする私の頭を衛士は優しく撫でる。

「あつ 、い」

「それはよかった」

 ひとり言にも似た呟きには返事があった。湿った前髪を掻き上げられ、額に口づけを落とされる。

「そもそも、なんで私だけ……」

 今の自分と衛士の格好を思い出す。不満を口にしたらキスで唇を塞がれた。そして衛士は余裕たっぷりに微笑む。

「だったら今度は未亜が俺を脱がせばいい」

 彼の口から発せられた提案に目が点になる。からかわれているのかと思ったが、衛士は私の右手を取ると、彼のシャツのボタンのところに持っていった。

「どうする? さっきから水を含んで重たいんだ」

 今さらの不満に私は唇を尖らせる。お湯はすっかり溜まったが、服を着たままだと出るときに体温を奪われ、意味がない。

 元はといえば、私のせいでこうなったわけだし……。

 一度唾液を嚥下し、私はそろそろと指先に力を込めて彼のシャツを脱がしにかかる。

 息遣いさえ感じそうな距離で、衛士からの視線を感じるが気づかないふりをしてボタンを外すことに意識を集中させた。

 思った以上に苦戦していると、突然衛士が耳たぶに唇を寄せた。

「な、なに?」

 完全に油断していた私は慌てて顔を上げ、耳を手で覆う。不意打ちもいいところだ。衛士はくっくと喉を鳴らして笑っている。

「あまりにも真剣な未亜が可愛いくて」

 まさかそんな答えが返ってくると思わなかったので面食らう。もしかして私、真面目にやりすぎていた?
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