極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 未亜から結婚を承諾してもらったものの、それは茉奈や杉井電産のためと割り切っている気がした。まさに政略結婚だ。

 自分のしたことを考えると未亜との関係にこれ以上を望むのは、未亜に求めるのは酷な話なのか。

 葛藤を抱えつつ未亜や茉奈と過ごす時間を少しでも増やして、距離を縮めていく。

 そんな折、茉奈と三人で水族館に行くことになった。付き合っていたときに未亜とデートした場所でもあり、懐かしく感じる。

 まさかまたここに未亜と来られる日がくるとは思わなかった。さらには子どもまで一緒だ。未亜と別れた頃には、想像もできなかった未来が現実にある。

 幸せを噛みしめる一方で、茉奈の面倒を見なくてはとひとり気負う未亜に、俺も父親としてできることをしたいと伝える。

 茉奈や未亜のためはもちろん、自分自身のために。仕事とはまた違う。ふたりが本当に大切で、守っていきたいんだ。

 ところが十分に楽しんだ後、帰り際に未亜と意見がぶつかった。

 転んで泣かずに立ち上がる茉奈に、つい『偉い』と褒めてしまったのがきっかけだ。

「泣かないのが、偉いわけじゃない。そんなふうに言ったら痛いって言えなくなっちゃうよ」

 そう告げる未亜はどこか痛々しそうだった。車の中で謝罪の言葉を口にしてから、彼女は自分の置かれていた状況を語りだす。

 ああ。だから未亜はいつも泣くのを我慢して、痛いと声も出せずに自分の中で解決しようとするんだ。

 未亜の言う通り、相手を責めても、なにかを求めても、結果は変わらないかもしれない。
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