極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「雨は好きなんじゃないのか?」

 意地悪く問いかけると未亜は唇を尖らせる。

「そうだけど……さすがに来る人のことを考えたら、結婚式の日は降らないでほしいよ」

 今日は未亜との結婚式当日だ。杉井社長も無事に退院し、参列する段取りになっている。

 どうやら杉井社長は茉奈の父親のことを含め、すべてを知っていたらしい。未亜が茉奈を出産した後、いろいろ調べたと話してくれた。

 たしかに未亜との結婚を俺に言い渡すうえで、先に茉奈の存在を知らせなかったのは妙だと感じていた。

 杉井社長は未亜に対し、仕事ばかりで厳しく接してきたことを後悔しているそうだ。その本音を知ったとき、未亜は泣き出しそうな顔をしていた。

 長年のわだかまりはそう簡単に消えないだろうが、思いの丈を話し合った杉井社長と未亜は、以前よりも親子の時間をとるようになり、茉奈を通して交流も増えた。

 今日の結婚式も楽しみにしてもらっている。

 茉奈は、未亜のカラードレスと同じ色のドレスを着る予定で、試着の段階で大はしゃぎだった。こんな小さくても着るものにこだわりがあるのは驚いた。

「不思議。衛士と別れて、茉奈の妊娠がわかって……こんな日がくるとは思わなかった」

 感慨深そうに未亜は呟く。それはこちらのセリフだ。未亜を失ったとき、後悔と絶望しかなかった。それがまた、こうして彼女と想いを通わせられるとは。

 俺はそっと彼女の額に口づける。
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