極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 茉奈のうどんが一番にやってきたので、持ってきていたエプロンを茉奈に装着する。

「茉奈、いただきますして」

「いただまーす」

 手をぱちんと合わせて挨拶したので、改めて小さなお椀にうどんを取り分けてやる。軽く息を吹きかけ冷ましてから彼女の前にお椀を置くと、茉奈は待ちきれないといった様子でフォークを片手にうどんを食べ始めた。

「上手に食べるんだな」

 一連の流れを見ていた衛士がしみじみと呟く。

「うん。保育園の先生にも褒められるんだけれど、茉奈はとにかく食べることが好きみたいなの」

「未亜と似ているな」

「かもね」

 苦笑して答えながら茉奈に気を配る。衛士と付き合っていた頃、気になるお店や行ってみたいカフェなどの情報を主に私が収集し彼に提案して一緒に行っていた。

 元々ひとりで行動することに躊躇いはないが、美味しいものや素敵な場所を誰かと共有できるのが嬉しかった。

 衛士は毎回、嫌な顔ひとつせず付き合ってくれて、なにげない会話を彼と楽しむのが幸せだった。

 その経緯から私の好みを把握して、たまに衛士が連れて行ってくれる場所はどれもはずれがなく驚いた。本人を前にしているからか次々と彼との思い出が蘇る。

 以前は思い出すだけで苦しかったのに。

「衛士と一緒に行ったアフタヌーンティーセットがあるカフェ、まだやってるかな?」

 ふと気になったことを口にする。紅茶が美味しくて、予約必須のアフタヌーンティーセットが有名なカフェの存在を思い出した。
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