極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 それをこうやってまた衛士本人に見抜かれて、弱さを晒すはめになるなんて。

 目に溜まる涙は熱いのに、流れ出すと冷たくて戸惑う。泣くなんて久しぶりだ。遠慮なく衛士の手を濡らしているが、彼はどう感じているんだろう。

 ちらりと上目遣いに衛士をうかがうと、慎重に顔を近づけられる。

「ごめん。それでも俺は未亜を愛している……愛しているんだ」

 彼の目に葛藤はあっても迷いはない。どこまでも強引で、ずるくて甘い。昔からそうだ。

「衛士なんて嫌い」

 いささか軽い口調で告げると、衛士は目を細める。

「いいよ。また好きになってもらう」

 さっきまでと打って変わって余裕のある言い方につい反抗心が芽生える。

「もう結婚しない」

「それは困るな」

 ついに彼が困惑気味に笑った。私の涙もいつの間にか止まっている。

「なんで嬉しそうなの?」

 そう言った私自身、不思議な気持ちだった。私が衛士に放った言葉はけっして褒められるものではなく、彼を責めて傷つける内容でもあった。

 それなのに、なぜか心が軽くなって衛士に向けて張っていた予防線も溶けて消えている。衛士は優しく涙の跡を拭って私の頬を撫でた。

「やっと未亜の本音をぶつけてもらえたから。別れたときも再会してからも未亜は俺を責めなかっただろ? 未亜がひとりで抱え込んで強がる性格なのをわかっていたはずなのに、ちゃんと話せないまま離れたことをずっと後悔していた」

 私は彼から視線を逸らし、ぎこちなく目線を落とす。
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