極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「それは……私が衛士からの連絡を全部断ったから」

 衛士だけが悪いわけじゃない。私もあのとき彼と向き合う勇気が持てなかった。あんなに大好きで一緒にいたにもかかわらず、衛士を信じられなかった。

 自分を守るためとはいえ、必要以上に頑なだったと当時の記憶が蘇る。

「もう俺には未亜のそばにいる資格はないと思っていた」

 衛士の呟きに私は再び彼の方を向く。その顔には自嘲的な笑みが浮かんでいた。

「未亜になんとか謝りたくて話を聞いてほしかったけれど、それは全部俺の自己満足だって気づいたんだ。未亜に拒絶されて、未亜の前から消えるのが俺に唯一できることだと自分に言い聞かせた」

 衛士はやはり私と別れてから早い段階でアメリカに戻ったらしい。彼が私を諦めたんじゃなくて、私が諦めさせたんだ。

 衛士にとってもわだかまりを残させたと少なからず責任を感じていると、衛士はなだめるように私の頭に手を置いた。

「けれど、ずっと未亜を忘れられなくて、帰国したらますます会いたい衝動が抑えられなかった。他の男と幸せにしている未亜を見たら諦められるとさえ思ったよ。そこに杉井社長から連絡があったんだ」

「そう……だったんだ」

 事の成り行きを聞いてやっと納得する。ラグエルジャパンの後継者として衛士が帰国したことを、父は先に関係者から聞いて知っていたんだ。

「茉奈のことは正直、驚いた」

 衛士の話に思考を切り替える。まさか別れた恋人と自分との間に子どもがいるなんて思いもしなかっただろう。
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