極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「実はこれ、二年前に未亜に渡そうと思って用意していたんだ」

「えっ?」

 突然告げられた事実に私は目を丸くした。

「新調するべきか悩んだんだ。でもあのときの想いを受け取ってほしいのもあったんだが……失敗したな」

「な、なんで!? 失敗なんてそんな」

 衛士の結論にさらに驚く。私がなにかまずいことをしてしまったのだろうかとあたふたしていると、衛士が先を続ける。

「茉奈がいることを考えたら、もっと普段使いできるデザインのものを選べばよかったな」

「そんなことないよ。私、この指輪で嬉しい」

 苦々しく笑う衛士に即座に返した。今度は彼が虚をつかれた顔になる。私は改めて左手の薬指に光るエンゲージリングを見つめた。

 衛士は本気で私と結婚を考えていてくれたんだ。あのときからずっと変わらずに。

「……ありがとう。私を諦めないでいてくれて」

 あんな別れ方をしたのに、ずっと想い続けてくれた衛士には感謝しかない。こうして行動して私に会いに来てくれなければ、彼と人生が交わることはなかった。

 会ってからもずっと私の気持ちに寄り添おうとしてくれていた。

「私もずっと衛士が大好きだよ」

 すると衛士がこちらに身を乗り出し、私の肩に手を置いて唇を重ねてきた。茉奈を抱っこしたままの状態だったので驚きが隠せない。

「なっ」

 唇はすぐに離れたが、茉奈のいる前だという恥ずかしさに動揺してしまう。対する衛士は幸せそうな顔をしていておかげで私は言おうとしていた文句を引っ込めた。
< 97 / 186 >

この作品をシェア

pagetop