極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 茉奈は眩い光を放つ指輪が気になるらしく、身を乗り出して触ろうとしている。それを制しながら私は笑った。

「私も衛士にそばにいてほしい。こんな私だけれど……これからはずっと一緒にいてください」

 かしこまってきちんと返事をするつもりが、最後は声がよれよれになってしまった。

 目の奥がじんわりと熱くなり、込み上げてくる想いが胸を締めつける。

「もちろん。未亜が離してほしいと言っても絶対に手放さない」

 衛士の笑顔に私も笑う。彼はケースから指輪を取り出すと、茉奈を抱っこしている私の左手を慎重に取った。

「茉奈、いい子にな」

 衛士に優しく言われ理解したのか、茉奈は手を伸ばさずお行儀よく私の膝に座って指輪を目で追っている。

 薬指に金属の冷たい感触があり、彼の手によってキラキラと輝く指輪がゆっくりと私の指元に収められた。左手の薬指に指輪をはめるのは初めてだ。

 しかも代物が代物なので妙に落ち着かない。でもまじまじと見つめていると、衛士と結婚するという事実がしっかりと形になっている気がして心が温かくなった。

「ありがとう。普段使いは難しいかもしれないけれど大事にするね」

 このダイヤモンドの大きさや輝きからして、それ相応のものなのは簡単に予測できる。普段使いをするにはおそらくためらう値段だ。

 なにより茉奈が触わったり逆に茉奈を傷つけてしまうかもしれないという思いもあった。
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