ココロの距離が離れたら
(1)
誰だって、大好きな人とつきあった時には、「きっとこの人とずっと一緒にいられる」という幸福感でいっぱいになって、その「ずっと」というのは、言葉にするならば「結婚」になるんだろう。だから、一緒にいる2人のカタチとして、いつかは「結婚」という言葉が出るんだと、私はずっと信じていたんだと思う。

よくある、倦怠期。
話しに聞く、3年目の危機。
いわゆる、そういった恋人同士のなんとも言えない空気感がまさか自分にも当てはまるなんて。

ただ、こればかりは自分だけが頑張っていてもどうにもならないのかもしれない。
自分は相手のことが大好きで、まだずっと大切な人なんだけど。
その想いが届かない場合もあるのかもしれない。

鈴木綾と鈴木大智。
同期入社の2人がつきあって、今まさにその3年目。
忙しい彼と、そんな彼の生活に置いてきぼりな感じが否めない私と。

同じ会社なのに、フロアが違うだけで毎日会えない。
顔も見れなくて、声も聞けない。
「恋人」の安心感に浸っていたのはいつまでだったっけ。

ね、大智、覚えてる?
一緒に旅行に行ったのはもう1年も前のことだって。

ね、大智、気づいてる?
一緒にいる時間がどんどんと減っていって、会話が少なくなっていって、
愛し合う時間が、その頻度がとても少なくなっていて。

私がどれほど不安になっているか。
一人で大智のマンションで料理を作って待っていて、連絡も来ないまま、料理にラップをかけて自分の家に帰る回数が増えているか。

寂しさと、自分への自信の無さがもう息苦しくなっていることに。

あなたは気づいていないんだろうな。


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