ココロの距離が離れたら

「たいちさーーん!早く早くっ!」

可愛らしい、高めの声にピクリとして、カフェの入口を見ると・・・

「あの子!!」

幸がイラっとしたように声をあげた。綾も目を離せず、呆然としてしまう。
だって。大智がいた。
いつも一緒にいる女性スタッフと。というよりも。

どうして、腕を組んでいるの?

いや、女性のほうが男性の腕に手を絡ませているだけのようにも見えるが。

どうして、嫌がらないの?

「萌ちゃん、分かったって!約束だったからね。でもテイクアウトだよ。時間ないし」
「分かってますよぉ。嬉しいなぁ、大智さんと来れて!」

ここ美味しいんですよぉ。これなんかオススメです。

語尾にハートマークさえ見えそうなテンションで話す女性は、菅原萌。
朝電話で話していた女性で、営業事務で今一番、大智のそばにいる子だ。
茶色の髪は肩上のボブで、パステルカラーのカーディガンに、ふんわりとしたフレアスカート。
小柄で、背の高い大智のそばにいると守ってあげたくなるような華奢な女性。

「あんなにくっつくことないよね!? 頭にくる、あの軽そうな女!」

ちょっと行ってくるわ!と言って今にも立ち上がりそうになる幸を慌てて抑える。

「だ、大丈夫だから、ね、幸。忙しいって言ってたし、今はやめてもらいたい!」
「そんなこと言って、いいの!? あれで!」

いや、良くはないけど。
腕を絡ませて、くっついて、甘えた声を出して。
どこからどう見てもカレシとカノジョの図だ。

「私より絵になる?」
「ばかなの!? 綾!」

ふとこぼれた言葉に幸が鬼のような顔をするが、綾は目が離せなかった。

至近距離で異性と話す大智に。
私以外の女性から腕をとられても外さない大智に。
困ったような顔をしながらも、笑いながら萌を見る大智に。

久しぶりに見た彼の笑顔がこれだなんて。

「何、してるんだろう、私・・・」

本当に分からなくなった。


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