初恋だった人が結婚した【完】

  
  それからずっと、何事もなかったように過ごしている。

 わざとなかったように時間が過ぎている。
 あの日の一言が大きな見えない溝をつくった。
 当然と言えば当然だ。逃げているのだから。不誠実なわたしのせいだ。
 

 こんな最低なクズを怒るでもなく、一生懸命に消しゴムで消そうとしてくれる。
 最初から何もなかったように1日を紡ごうとしてくれる。
 本当に夢だったかもと逃げ出そうとする時、「お前はダメだ。」ともう1人のわたしが言う。


 お前だけは夢だと逃げるな、お前のせいだ。そう言われながら、そうだぞと思い直す。

 
 消しゴムで消したのではない。消せなかった。だからボールペンで黒く塗りつぶさせた。


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