初恋だった人が結婚した【完】

 
 「久しぶり」

 
 ラインがピコンと鳴る。
 高校の時の同級生からだった。

 当時は仲が良かった友人だが連絡を頻繁に取り合うわけでもなく、卒業後は自然と疎遠になっていったため、もう友人と名乗っていいか分からない。

 「来週飲み会あるんだけど、来る?」
 「先輩のお祝い」

ピコン、ピコンと立て続けに送られてくる。ストレートな物言いは当時と何も変わっていないのに、淡白だと感じるのはずっと会っていない時間のせいだろうか。
 

 開いてしまったため、既読がつく。

 見たかったような見たくないようなその文字に少し動揺した。

 もしここで飲み会に参加して人目見たら、何か変わるのだろうか。
 この薄情で小賢しい現状をどうにかできるのだろうか。
 
 もうこれ以上アユに甘えてはいけない。
 自分のことは自分で決めなければならない。
 一歩踏み出さなければいけない。

 その勇気がない。
 何か悪いことをしている気持ちになってきた。
 これ以上迷惑はかけられない。
 

 だから行くのか、行かないのか。



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