転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
「そうなんだ? よかった! じゃあ今日はいっぱい話せそうだね。中に入ってもいい?」
レオン様はにぱっと私の庭に咲いている花のような笑顔を見せた。そして私が返事をする前に、勝手に家の中へ入ってこようとする。
慌てて止めようと思ったが、そもそも玄関には鍵がかかっていることを思い出した。このまま私も部屋に戻って外に出なければ、ふたりきりで話すのを避けることができるかも。
私の家の庭は、玄関のドアからは繋がっていない、特殊な作りになっている。部屋の中に、庭へ続く裏口のようなドアがあり、そこからしか庭へ出ることはできない。
私はこの一週間、毎日彼と顔こそ合わせていたが、ふたりきりなることは徹底して避けてきたのだ。会うときにはいつもベルが一緒にいたし、ときにはマリルーも呼んでいた。しかし、今日は頼りになるふたりはいない。自分の身は自分で守らないと。
レオン様が玄関にいるあいだにじょうろを置いて、ひとり部屋に逃げ込もうと思った矢先のこと。
「リーズ!」
「にゃあっ⁉」
真後ろからレオン様の声がして、私は変な雄たけびを上げてその場にしゃがみ込んだ。
「ふっ……あははっ! うさぎなのに〝にゃあ〟って!」
それじゃあまるで猫だよ。と言って、レオン様はお腹を抱えて笑っている。無意識に発してしまったとはいえ、こんなに笑われると恥ずかしくなってきた。
「そんなに笑わなくても……というか、なんでレオン様がここにいるんですか⁉」
大事なことを思い出した。裏口か、塀を飛び越える以外で入ってこられないこの庭に、なぜレオン王子がいるのか。
「普通に玄関から家の中に入って、庭に出てきただけだけど?」
「……!」
私はベルがいつ帰って来てもいいように、玄関の鍵をかけていなかったことをいまさら思い出した。やらかした。用心深い私はこんな知り合いだらけの村であっても、絶対に鍵を開けっ放しにすることなんてなかったのに!
「やっとふたりきりになれたね。リーズ」
絶賛自己嫌悪中の私とは正反対に、レオン様は大層ご機嫌な様子だ。私の隣のしゃがみ込み、空に浮かぶ太陽より眩しい笑顔を向けてくる。
ずさあああっ! と効果音がつく勢いで、私は後ずさりしてレオン様から離れた。ライオンとふたりきりなんて、なにをされるかわからない。こんなに構ってくるのにも、なにか裏があるのでは……と警戒心が解けず、距離を詰められると怯えてしまう。
「そんなあからさまに逃げないでも……僕のこと、まだ怖いかな?」
レオン様は眉を下げながら、困ったような笑みを浮かべた。
「言ったじゃないですか。私、ライオンにトラウマがあるって……」
「食べられそうで怖いんだよね。それなら安心して。僕がライオンで君がうさぎだとしても、僕らは獣人。獣人が獣人を食べるなんて話、聞いたことないだろ?」
以前、ベルにも同じことを言われたのを思い出す。
「僕が君に変な真似をしようものなら、そこにいる怖い虎の騎士が飛んでくるから安心していいよ」
レオン様は木陰で待機しているジェイドさんを指差して、宥めるように言った。
私が王子に変なことをしないかを、ジェイドさんは見張っているのかと思っていたが、どうやら逆らしい。……いや、多分どっちもか。
「さらに、君のバックには魔獣のベルオムがついているだろ? 魔獣に寵愛を受けている相手に危害を加えるようなことは絶対しないさ。だから少しだけ、近づいてもいい?」
周りから見ると、私がベルに寵愛されているふうに見えるんだ。うれしくてにやけてしまう。
「……ちょっとだけなら、わかりました」
上機嫌になった私は、レオン様のお願いに応えてあげることにした。発言に説得力も感じられたし、少し距離が近づくくらいなら、私もへっちゃらなはず――。
「って、近っ!」
近づいていい許可を出した途端、レオン様は私の真隣まで距離を詰めてきた。私はすでに庭の端まで逃げていたので、これ以上逃げ場はない。
「これ、全然少しじゃないですよね!?」
肩がぶつかりそうなほどの近距離まで迫ってきている。
「細かいことは気にしたら負けだよ。ああ、これでやっと君のかわいい顔が間近で見れる」
顔を下から覗き込まれ、おもわず私もまじまじと彼の顔を見てしまった。
ライオンの耳を視界に入れなければ、見惚れてしまうほどの美しい顔だ。声色も心地いいし、なんだかいい香りもする。
優しいし、甘い言葉をさらりと言ってくるし……世間から完璧王子と言われているのも頷ける気がした。
だからこそ、なぜみんなが憧れる王子様が、私なんかにこの笑顔を向けてくるのかがわからない。たくさんの綺麗な女性がいるなかで、彼が一目惚れする相手が私だなんて、信じられるほうがおかしい。
「こんな辺鄙な村に、なんの用があって毎日来てるんですか?」
「リーズに会いたいからだよ」
即答されて、軽い頭痛がした。
一週間逃げて、婚約の申し出を断り続けたというのに。彼はあきらめるという言葉を知らないのだろうか。
レオン様はにぱっと私の庭に咲いている花のような笑顔を見せた。そして私が返事をする前に、勝手に家の中へ入ってこようとする。
慌てて止めようと思ったが、そもそも玄関には鍵がかかっていることを思い出した。このまま私も部屋に戻って外に出なければ、ふたりきりで話すのを避けることができるかも。
私の家の庭は、玄関のドアからは繋がっていない、特殊な作りになっている。部屋の中に、庭へ続く裏口のようなドアがあり、そこからしか庭へ出ることはできない。
私はこの一週間、毎日彼と顔こそ合わせていたが、ふたりきりなることは徹底して避けてきたのだ。会うときにはいつもベルが一緒にいたし、ときにはマリルーも呼んでいた。しかし、今日は頼りになるふたりはいない。自分の身は自分で守らないと。
レオン様が玄関にいるあいだにじょうろを置いて、ひとり部屋に逃げ込もうと思った矢先のこと。
「リーズ!」
「にゃあっ⁉」
真後ろからレオン様の声がして、私は変な雄たけびを上げてその場にしゃがみ込んだ。
「ふっ……あははっ! うさぎなのに〝にゃあ〟って!」
それじゃあまるで猫だよ。と言って、レオン様はお腹を抱えて笑っている。無意識に発してしまったとはいえ、こんなに笑われると恥ずかしくなってきた。
「そんなに笑わなくても……というか、なんでレオン様がここにいるんですか⁉」
大事なことを思い出した。裏口か、塀を飛び越える以外で入ってこられないこの庭に、なぜレオン王子がいるのか。
「普通に玄関から家の中に入って、庭に出てきただけだけど?」
「……!」
私はベルがいつ帰って来てもいいように、玄関の鍵をかけていなかったことをいまさら思い出した。やらかした。用心深い私はこんな知り合いだらけの村であっても、絶対に鍵を開けっ放しにすることなんてなかったのに!
「やっとふたりきりになれたね。リーズ」
絶賛自己嫌悪中の私とは正反対に、レオン様は大層ご機嫌な様子だ。私の隣のしゃがみ込み、空に浮かぶ太陽より眩しい笑顔を向けてくる。
ずさあああっ! と効果音がつく勢いで、私は後ずさりしてレオン様から離れた。ライオンとふたりきりなんて、なにをされるかわからない。こんなに構ってくるのにも、なにか裏があるのでは……と警戒心が解けず、距離を詰められると怯えてしまう。
「そんなあからさまに逃げないでも……僕のこと、まだ怖いかな?」
レオン様は眉を下げながら、困ったような笑みを浮かべた。
「言ったじゃないですか。私、ライオンにトラウマがあるって……」
「食べられそうで怖いんだよね。それなら安心して。僕がライオンで君がうさぎだとしても、僕らは獣人。獣人が獣人を食べるなんて話、聞いたことないだろ?」
以前、ベルにも同じことを言われたのを思い出す。
「僕が君に変な真似をしようものなら、そこにいる怖い虎の騎士が飛んでくるから安心していいよ」
レオン様は木陰で待機しているジェイドさんを指差して、宥めるように言った。
私が王子に変なことをしないかを、ジェイドさんは見張っているのかと思っていたが、どうやら逆らしい。……いや、多分どっちもか。
「さらに、君のバックには魔獣のベルオムがついているだろ? 魔獣に寵愛を受けている相手に危害を加えるようなことは絶対しないさ。だから少しだけ、近づいてもいい?」
周りから見ると、私がベルに寵愛されているふうに見えるんだ。うれしくてにやけてしまう。
「……ちょっとだけなら、わかりました」
上機嫌になった私は、レオン様のお願いに応えてあげることにした。発言に説得力も感じられたし、少し距離が近づくくらいなら、私もへっちゃらなはず――。
「って、近っ!」
近づいていい許可を出した途端、レオン様は私の真隣まで距離を詰めてきた。私はすでに庭の端まで逃げていたので、これ以上逃げ場はない。
「これ、全然少しじゃないですよね!?」
肩がぶつかりそうなほどの近距離まで迫ってきている。
「細かいことは気にしたら負けだよ。ああ、これでやっと君のかわいい顔が間近で見れる」
顔を下から覗き込まれ、おもわず私もまじまじと彼の顔を見てしまった。
ライオンの耳を視界に入れなければ、見惚れてしまうほどの美しい顔だ。声色も心地いいし、なんだかいい香りもする。
優しいし、甘い言葉をさらりと言ってくるし……世間から完璧王子と言われているのも頷ける気がした。
だからこそ、なぜみんなが憧れる王子様が、私なんかにこの笑顔を向けてくるのかがわからない。たくさんの綺麗な女性がいるなかで、彼が一目惚れする相手が私だなんて、信じられるほうがおかしい。
「こんな辺鄙な村に、なんの用があって毎日来てるんですか?」
「リーズに会いたいからだよ」
即答されて、軽い頭痛がした。
一週間逃げて、婚約の申し出を断り続けたというのに。彼はあきらめるという言葉を知らないのだろうか。