義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 無事に帰宅してからも母に問い質す気にはなれず、聖さんが帰ってくると胸の苦しさが増した。その翌日も真実を明らかにする勇気は出なくて、何事もなかったように振る舞っている。

 いつも通り夕飯もお風呂も済ませたあと、部屋から出てきた聖さんと会うと、「今日のお弁当も美味しかったよ」とふわりと微笑まれた。

 そのひと言で今日の働きも報われる。無性に愛しく、切なくなって、周りに両親がいないのを確認して聖さんの腰にぎゅっと抱きついた。

 彼は目を丸くしたものの、すぐに優しく私を抱きしめ返して髪を撫でてくれる。


「どうした、いつになく積極的だな。昨日も上の空だったように見えたけど、職場でなにかあったか?」


 気づかれていたのかとギクリとするが、今は打ち明けるタイミングではない。ふふっと笑って首を横に振る。


「なにもないよ。聖さんの気にしすぎ」
「そう?」
「今はちょっと甘えたくなっただけ。明後日まで会えなくなるから」


 明日は聖さんが東京へ行く日。一泊してくるだけだし、普段もすれ違ってしまうことは多々あるのだが、彼が外泊するのはあまりないから妙に寂しい。先ほどのこともあって、なんとなく不安にもなる。
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