義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 これらの話を聞くと、俺にはどうしても御村先生が全力で戦ってくれたとは思えない。菅屋さんを守るために、もっと奔走できたはずなのに。


「彼の言い分を主張しなかったのは、立証できる証拠がなかったからですか? それとも……あなたも筧になにか弱みを握られでもしたのですか?」


 ある程度の自信を持って問い詰めてみたところ、彼がわずかに瞳を揺らしたのがわかった。

 碓氷さんから、御村先生が結婚したという女性は、実は筧の元妻だという事実を聞いた。つまり、筧との離婚裁判中に彼の妻と親しくなったようなのだ。

 もし、その件で筧の恨みを買ったとしたら、先生も脅されていいように利用されている可能性は十分ある。

 筧にはこれまでいくつかの疑惑が持ち上がってきたが、どれも罪には問われていない。それは彼が裏で手を回しているからなのかもしれない。菅屋さんのときも、御村先生を自分の味方につけていたとしたら……。

 しかしこれは憶測で、それこそ証拠はない。仮に事実だったとしても、先生は決して認めたりなどしないだろう。

 それでも言い分を聞きたくて、重そうな口を開く彼に注目する。
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