義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

「菅屋さんの刑を軽くするために、できる限りのことはしたよ。依頼者を守るのは弁護士なら当然だろう。だが、彼の証言には不明瞭なところが多々あった。検察側にそれを突かれ、事実を認めてもらえなかったことについては力不足だったと思っている」

「本当にそうでしょうか。菅屋さんは、筧に車内で暴言を吐かれたこともあったと言っていました。ドライブレコーダーを調べれば、音声が録音されていた可能性もあります。なのに、そういった証拠は出されなかった」


 憤りを抑えた声で反論すると、先生は静かにまつ毛を伏せた。


「御村先生は徹底的に調べ上げ、粘り強く交渉する優秀な弁護士だ。だからこそ、あの裁判はどうしても腑に落ちないんです。筧と繋がっているのかどうかはわかりませんが、少なくともあなたは菅屋さんの罪を軽くするために全力を尽くしてはいない」


 テーブルに置いた手を、無意識にぐっと握りしめる。


「菅屋さんが逮捕されて、彼の家族はつらい思いをしました。奥様は離婚し、彼の娘さんは当時のショックで父親に関する情報をすべて忘れてしまった」


 父親だけでなく、俺のことも。

 悔しさを滲ませて言うと、六花の事情を初めて知ったであろう先生は一瞬驚きを露わにし、申し訳なさそうに眉根を寄せた。
< 231 / 265 >

この作品をシェア

pagetop