義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 抱きしめられた腕の中で涙を拭い、密かに抱えていた気持ちを吐き出す。


「最近、少しづつお父さんのことを思い出して。さっきみたいに記者が来たり、私との関係を面白がる人が出てきたりしたら、聖さんに迷惑をかけるなって悩んでたの」
「それで上の空になっていたのか。あんなの迷惑のうちに入らないよ。俺たちの関係だって、むしろ見せつけてやればいい」


 納得したらしい彼は、なんてことないというふうに口角を上げた。そして数秒考えを巡らせたあと、立てた小指を私に差し出す。


「六花が安心できるように、指切りしておこうか」
「指切り?」


 ぐすっとを啜り首をかしげる私に、聖さんはとろけるような笑みを向ける。


「俺のお嫁さんになるって約束して。おままごとじゃなくて、本物の」


 ──突然のプロポーズに、心臓が大きな音を立てた。

 本当に? 聖さん、本当に私でいいの?

 夢や冗談じゃないよねと、頭の中で何度も確認する。止まり始めていた涙がまた湧いてきて、ぐしゃぐしゃになった顔を半分両手で覆う。


「……旦那様になってくれるの?」
「近い将来に、必ずね」


 こちらを見つめる彼の瞳には一片の迷いもない。私も覚悟を決めて小指を絡め、泣きながら微笑み合う。

 契約書にサインするよりも、今の私にとってはこの指切りがなにより嬉しくて、相応しい気がした。

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